自宅での尿道カテーテル管理 

尿道カテーテルを留置したまま日常生活を送ることは身体的な不快感だけでなく、生活上の支障や羞恥心、事故や合併症のリスクも伴い大変な苦痛です。

しかしきちんとカテーテル管理し、異常時に早めに対応すれば、大きなトラブルを避けられる可能性が高いです。

 

はじめに、尿道カテーテルは、膀胱に溜まった尿を自分の力で出せない場合にカテーテルを入れて排出を促す目的があります。

たとえば、

・排尿障害がある、残尿がある

・尿意がない、失禁の頻度が高い

・著しい皮膚障害(床ずれ)がある

・厳密な尿量測定が必要

このような場合に使用しますが、尿道カテーテルの留置は合併症や日常への支障を伴うため、活動性や身体状態などを考慮しながら適応を判断します。

尿道カテーテルの長期留置による合併症

○ 尿路感染症(膀胱炎、尿道炎、腎盂腎炎、前立腺炎など)
○ 膀胱結石
○ 尿道瘻孔

上記は長い期間カテーテル留置することにより発症しやすい病気の代表です。またカテーテル挿入直後は、尿路を刺激されたことによる出血や痛みを生じることがありますが、徐々に改善することが大半です。

自宅でおこなう尿路感染対策

尿道カテーテルからの感染経路で多いのは以下の3か所です。
✔️ カテーテル挿入部
✔️ 尿道カテーテルと蓄尿バックの接続部
✔️ 蓄尿バックの排液口

感染を防ぐためにできること

・1日1回以上陰部洗浄または入浴やシャワー浴
尿道口や陰部の細菌は、健常人であれば自浄作用が働き排尿や尿道からの分泌液で体外に排出されます。しかしカテーテルを留置している場合は自浄作用が弱まり微生物が繁殖しやすい状態にあります。陰部を清潔にすることで細菌の繁殖を抑えられます。

・尿道カテーテルと蓄尿バックの接続部は清潔に保つ
接続を外す場合やカテーテルにキャップをする場合は、接続部やキャップをアルコール綿などで拭き清潔に扱いましょう。

・蓄尿バックは膀胱部(腰のあたり)より低い位置を保つ
排液の中には細菌が繁殖しています。バック内の尿の逆流を防ぐことで細菌の侵入を阻止できます。

・蓄尿バックに溜まった排液は定期的に破棄する。
尿細菌は時間の経過と共に繁殖します。寝たきりの場合でも1日1~2回は破棄しましょう。

・排液口を清潔に保つ
床について埃が入ったりしないよう管理しましょう。汚染した場合はアルコール綿などできれいに拭きましょう。

・水分摂取
水分を摂り排尿を促すことで、膀胱内の細菌を排出し感染予防につながります。

(腎臓や心臓の病気がある方などは水分摂取量にも注意が必要です。)

※カテーテルに触れる前後は手洗いを徹底しましょう。

 

排尿トラブルに早めに気づこう

排尿トラブルに気付くために、以下の観察をしましょう。

尿量が著しく少ない

水分摂取量や発汗量などにもよりますが、正常な尿量は500~2000ml/日程度です。尿量低下には以下の原因が考えられます。

①カテーテルが閉塞している
カテーテルが詰まり尿が通過できない状態です。尿の浮遊物や混濁が強いときに起こりやすいです。詰まりを押し流すようにカテーテルをこすると解消することもあります。

閉塞症状として膀胱のあたり(下腹部)が膨満したり、腹部の不快感などが見られます。
普段から水分摂取を心がけ、尿の流出を促すことが予防になります。
またカテーテルが屈曲・圧迫された状態でも同様の症状が起こります。カテーテルが体の下敷きになっていたり、曲がった状態のままになっていないか確認しましょう。

②水分不足
尿量が少なく濃い色の尿が見られる場合は、水分が不足している可能性が高いです。脱水により全身に影響する可能性もあるため、飲み物やフルーツで水分を補いましょう。

③病気が原因
水分量やカテーテルの問題がなく尿量が少ない場合は、早めに医師へ相談しましょう。水分が体内に蓄積された状態は身体に大きな負担となります。

尿の異常

正常な尿は淡い黄色で透き通った状態です。
血尿、混濁、浮遊物、沈殿物、色の異常、刺激臭がないかなどを確認しましょう。

またこれらの症状が続く場合、尿路感染や腎臓・膀胱に異常が生じている可能性が高いと思われます。体温異常、悪寒、腹部・腰部の痛みなどの全身症状がないかを観察してみてください。尿路感染・障害が生じている場合、重症化するケースもあります。早めに医療機関を受診しましょう。

※一時的な症状の場合もあり、たとえば水分量の低下で尿汚染が強く見えたり、カテーテルを引っ張って尿道損傷を起こした場合に血尿が見られるといったケースです。一時的な症状でも自己判断で様子を見るのは1~2日程度にしましょう。

こんな時はどうする?尿道カテーテルで困ったとき

カテーテルの脇から尿が漏れている

カテーテルが屈曲・圧迫していませんか?尿汚染が強い場合はカテーテル閉塞が考えられます。またカテーテルの固定が緩くなっている場合も尿漏れを生じます。看護師や医師に報告しましょう。

陰部が腫れている、膿がでてくる

陰部は皮膚が弱く、オムツで蒸れてりして皮膚トラブルを起こすしやすい部位です。発赤や膿が出ている場合は陰部の炎症や泌尿器の病気が考えられます。痛みや痒みによる負担も大きいを思われますので、早めに医師へ相談しましょう。

カテーテルを引っ張ってしまう

カテーテルに手が届かないよう工夫しましょう。カテーテルをズボンの中に通し裾から出す、太もものあたりにテープで固定する、つなぎ服の着用といったことが対策となります。またカテーテルをいじってしまう原因があれば排除しましょう。たとえばカテーテルが皮膚にあたり圧迫や摩擦をしていないか、蓄尿バックの固定位置が体から遠く引き攣っていないかなどがないか気をつけましょう。

カテーテルを切ってしまった

ハサミなどでカテーテルを切ってしまう事故もあります。この場合は家庭での対処は難しいので医師や看護師に報告しましょう。カテーテルは膀胱内でバルーンを膨らますことにより固定されています。無理に引き出すと膀胱や尿道が損傷します。

カテーテルがあたることによる皮膚トラブル

カテーテルの固定位置は毎日少しずつずらしたり、カテーテルを柔らかい布などで保護することで皮膚刺激を抑えられます。テープで固定する場合は3日に1回は交換する方が良いです。

人目を気にせず外出したい

小さめの蓄尿バックや収納袋を活用できます。蓄尿バックの収納袋はたすき掛けタイプや、腰・足にマジックテープで固定するタイプのものなど、最近は種類も多いので探してみることをおすすめします。

活動性が高い方ならば一日中蓄尿バックをつけた生活は日常生活の支障となります。眠っている時以外は蓄尿バックを取り外し、日中は膀胱に溜まった尿を定期的にカテーテルからトイレなどに排出する方法もあります。きちんと自己管理ができること、医療者の指導の下行うのが前提条件です。

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