生活保護を受けている方が介護施設への入所を考える際、心配事や不安も多いのではないでしょうか。
・生活保護費内で入所できるのか
・安価な施設ではサービスの質が低いのではないか
・費用以外でたくさん妥協しないといけないのではないか
などと感じてしまうかもしれません。
介護を受けることや住まいを確保できることは重要ですが、一方で自分に合わない環境での生活はストレスを溜めてしまいます。
また、自身の身体状況に見合った施設でないと、適切なケアを受けられない可能性も高くなります。
ですので、妥協できないところはしっかり意識し施設を探す必要があります。
ここでは、生活保護を受けている方が入所可能な施設の特徴や、サービスの質、希望に沿った施設を見つけるための方法もご紹介します。
生活保護受給者が入れる介護施設
生活保護を受けている方々が入居できる介護施設は少ないというわけではありませんが、見つけるのは容易ではありません。
まず制度上のルールについてですが、
生活保護者を受け入れている施設は、施設側が生活保護法の指定を受けている必要があります。
なお、介護保険法の指定を受ければ、自動的に生活保護法の指定も受けたこととみなされます(H26年7月以降の指定施設が対象)。
ただし、法律上の条件を満たしていても、生活保護受給者を受け入れられない施設も多くあります。
その理由は費用面からです。
生活保護の範囲内まで利用料金を下げることができない施設は、生活保護者の入居を受け入れません。
したがって、生活保護者を受け入れている施設は、比較的安価〜一般的な料金設定の施設ということです。
生活保護は、最低限の生活を維持するための支援であり、当然ながら高級志向や一般よりもサービスが手厚い施設への入居は難しいことを覚えておいてください。
では、実際に生活保護者を受け入れている施設はどのような特徴を持っているのでしょうか。
生活保護者が支払う施設料金
まず生活保護者受け入れをしている施設がどのようなところかを説明するために、費用面について説明します。
生活保護者が施設に入所する場合、
多くの施設において標準の料金とは別に生活保護受給者用の料金設定を設けています。
施設には特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、有料老人ホームなど、さまざまな形態がありますが、
それぞれ料金の相場は異なり一概に言うことはできません。
下記の施設は、低所得者(生活保護受給者も含む)に対し施設費の負担を軽減するための措置である『特定入所者介護サービス費』というものが使える施設です。
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
- 介護老人保健施設(老健)
- 介護療養型医療施設
- 介護医療院
- 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
これらの施設に入居した場合、
特定入居者生活介護サービス費が適用し施設へ支払う食費・住居費などが免除されます。
また上記の施設以外で、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅なども選択肢として考えることができます。
こちらの施設は家賃、管理費(共益費)、食費といった料金が固定で発生しますが、
家賃は『住宅扶助』から、食費や共益費は『生活扶助』から支給されることになります。
- 生活保護者が入れる介護施設のまとめ
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- 特定入所者生活介護サービス費が適用になる施設: このタイプの施設は、特定の介護サービス費が生活保護法に基づいて支給されるため、生活保護受給者に適しています。
- 生活保護の支給額内で支払える料金設定の施設(その他の収入を踏まえて払える料金の施設): このタイプの施設では、生活保護の住宅扶助や生活扶助、他の収入がある場合はその収入も考慮して料金を支払うことができます。
生活保護受給者が施設で提供されるサービス
生活保護者が少ない自己負担額で入所すると、サービスの質が劣るのではないかという心配が出てくるかもしれません。
しかし、その心配は不要です。
生活保護者を受け入れている施設の大半は、生活保護受給者以外の人も受け入れています。
サービスの質や量は生活保護者と一般の入居者で差別されることはありませんのでご安心ください。
入所者全員に対して平等なケアが提供されます。
また、施設で受ける介護サービスや医療サービスの量は、施設の料金設定に関係なく、法律上のルールで決められています。
介護サービスは要介護度に応じた支給限度額内でサービスが提供され、受けたサービスの自己負担分は介護扶助として支給されます。
医療サービスに関しては、身体や生活に必要なものであれば、医療扶助として現物給付が受けられます。
ただし、支給限度額を超えるサービスは生活保護でも保障されませんし、医療面においても保険対象外のケア(先進医療や体調・生活維持に直結しない医療ケア)は生活保護の対象外です。
生活保護受給者が介護施設に入居した場合のお部屋や食事
生活保護法では、特別な居室や基準を超える特別な食事は支援の対象外とされています。
施設によってお部屋のタイプは異なりますが、生活保護受給者の場合は、ご自身の希望で個室や特別な部屋に入ることはできません。
ただし、個室しかない施設は別です。多床室やユニット型個室がある施設では、一般的に料金設定が安い部屋に入ることになります。
生活保護は最低限の生活を保障するためのものです。
先述したとおり一般の入居者と差別されることはありませんので、通常の食事や生活環境は提供されます。
一般的な料金に上乗せが必要な特別な部屋や食事は対象外ということです。
生活保護受給者の施設探しガイド
この章では、生活保護受給者受け入れ施設の探し方や確認すべきポイントについて解説します。自分に合った施設を見つけ、快適な生活を送るためのヒントをお伝えします。
自分に合った施設を見つけるための手順と注意点
介護施設はさまざまな形態や仕組みがあります。生活保護受給者を受け入れていると言っても、どの施設でも適切とは限りませんし、施設側もすべての方を受け入れるわけではありません。自身の身体状態に合った施設を探し、希望の環境で生活できる場所を選ぶことが重要です。
例えば、医療ケアの必要な方が医療管理が不十分な施設に入居してしまうと、入居者自身の負担が増えるだけでなく、通院や入院による医療費や介護費用も高額になる可能性があります。同様に、認知症のサポート体制が不十分な施設では、症状が悪化した際に他の入居者に迷惑をかけることになり、退去を命じられることもあります。
自分の状態に合わなくなり退去せざるを得なくなると、一時金や入居準備に費やしたお金が無駄になってしまいます。したがって、自分に合った施設を見つけることは、非常に重要です。
さらに身体面だけではなく、静かに過ごしたい、他の人とコミュニケーションをとりながら楽しく過ごしたい、外出や自由度の高い生活がしたいなど、自身の生活環境に合った施設を選ぶことも重要です。
例えば、無口で人との交流が疲れる方が、集団行動を強制される施設に入居すると苦痛になります。金額だけでなく、自分らしく過ごせる環境かどうかも考慮しましょう。
まずは生活保護者の受け入れを前提とするのではなく、自分に合った施設とはどのような場所か考え、希望の施設を探しましょう。
施設の選択肢を広げる
探した施設の中には、生活保護者を受け入れていない場所や待機期間が長い場所も存在します。そのため、できるだけ多くの施設を探し、選択肢を広げることが大切です。以下の方法で情報を収集しましょう。
- 病院の相談窓口を活用する:地域の病院には地域連携室・退院調整室、患者サポートセンターなどがあります。そこには施設の情報が豊富にあります。入院や通院で利用している病院に相談してみましょう。
- ケアマネージャーに相談する:ケアマネージャーは状況を把握しており、適切な施設を提案してくれる可能性があります。しかし、ケアマネージャー個人の情報量には差があるため、複数の意見を聞くことが重要です。
- 地域包括センターや福祉課に相談する:地域包括センターや市区町村の高齢福祉課、社会福祉協議会などでも情報を得ることができます。
施設の受け入れ状況を確認する
自分に合った施設を見つけたら、その施設が生活保護受給者を受け入れているかどうかを確認しましょう。以下の方法が有効です。
施設のホームページ:ホームページを確認しても生活保護受け入れについての情報が不足していることが多いです。そのため、直接施設に問い合わせることが確実です。
その他問い合わせ先:自治体のホームページ上に「生活保護法指定介護機関一覧」がある場合もありますので、そちらも確認してみましょう。
施設費用と生活保護の調整
希望の施設が生活保護者を受け入れているとしても、自身の受給額と施設費用を照らし合わせ、支払い可能な範囲かどうかを確認する必要があります。以下の方法で調整しましょう。
- 施設担当者との調整:施設担当者が生活支援課と連携し、支給額と施設費用の調整を行ってくれる場合もあります。入居調整の過程で相談してみましょう。
- 生活支援課への確認:自身で生活支援課に問い合わせる場合は、施設費用を確認した上で、支給額との調整が可能かを確かめます。
まとめ
- 生活保護者を受け入れている施設は、施設側が生活保護法の指定を受けている必要がある。
- 特定入所者介護サービス費が適用される施設では、食費や住居費などが免除される。
- その他の施設においては、家賃は『住宅扶助』から、食費や共益費は『生活扶助』から支給される。
- 生活保護受給者が施設に入居する際、一般の入居者と差別されることはない。受ける介護・医療サービスは、施設の料金に関係なく、状態に合わせたものが提供できるよう制度上のルールがある。
生活保護受給者の施設探しにおいては、ご自身の身体状態や生活環境に合った施設を選ぶことが重要です。自分らしく過ごせる環境かどうかを考慮し、金額だけでなく生活環境にも注目しましょう。