災害が迫ると、在宅で療養中の方々には大きな混乱と負担が押し寄せます。一切の当たり前が揺らぎ、生命へのリスクも身近に迫っているかもしれません。しかし、危機的状況に陥ってしまった後に情報不足を嘆いてもどうすることもできません。
この記事では、いざという時に役立つ情報と、今からできる具体的な対策をご紹介いたします。
あなたの安全を守るための知識と準備を整えましょう。
災害時の訪問看護|在宅患者の医療アクセスが脅かされる現実
災害が発生すると以下のようなことが起こり、自宅で療養している人に大きな混乱・負担が生じることが予測されます。
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アクセスの制約: 災害によって交通網や通信網が混乱し、在宅医療を提供するための医療機関や薬局へのアクセスが制約されることがあります。医療スタッフや必要な医療資源が現地に到達するまでの時間がかかることになります。
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電力供給の喪失: 災害では電力供給が中断する可能性があります。在宅医療に必要な医療機器が正常に機能しない場合、在宅患者の健康状態の管理が困難になることがあります。
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医療体制の混乱: 災害時には医療体制が混乱し、医療スタッフや資源が限られる場合があります。在宅医療に携わる医師や看護師、薬剤師などの医療従事者が被災し、在宅患者への訪問や適切な医療提供が遅延する可能性があります。
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心理的な影響: 災害は在宅患者に対して心理的な負担を増大させます。避難や避難所での生活、被災地の状況への不安や恐怖、家族や友人の安否などの心配などが、在宅患者の健康状態に影響を及ぼす可能性があります。
普段の生活でさえ困難を要しているのに、災害で心身にダメージを負い物資や援助者の手までもなくなると、想像するだけで恐ろしいです。
次の章からは実際の対策について見ていきましょう。
災害時の在宅サービス対応ガイド|安心して訪問看護と介護を受ける方法
災害が発生すると、在宅サービス提供事業所の機能が制限されたり、連絡手段が途絶えることがあります。
災害時の対応に関して制度上の整備は不完全ですが、過去には以下のような対応がなされています。
訪問介護の対応
災害時には、訪問介護においても柔軟な対応が求められます。通常は特定の場所でのサービス提供が行われますが、災害発生時には避難所や一時的な居住場所でもサービスを受けられるようになるため、自治体は事業所に対して柔軟性を促しています。
予測可能な災害の場合は、事前に避難場所や連絡手段(SNSや掲示板)を共有することも大切です。
訪問看護の対応
訪問看護においても同様の対応が求められます。通常は医師の指示書に基づいて行われますが、災害時には医師との連絡が取れない場合があります。このような場合、看護師の判断により必要なケアを提供することが認められる場合もあります。また、新たな主治医を見つけるための支援も訪問看護師には求められます。
その他のサービス
施設の受け入れ拡大
災害時には、介護施設も定員を超えた受け入れや居室以外のスペースでの受け入れが勧められています。
制度上の定員を超えた利用者、医療スタッフの不足を考えると満足いくケアを受けられる可能性は低いですが、災害時に必要な設備が整った施設で過ごせるのは大きな安心になるでしょう。
福祉用具の再貸与
災害前に使用していた福祉用具が失われたり破損した場合でも、再度貸与を受けることが可能です。
居住地以外の地域でのサービス利用
地域密着型サービスは拡大傾向にあり、住み慣れた街で安心したサービスが受けられるものです。
通常は居住地域でのサービス利用が原則ですが、災害時には居住地域以外の利用も一時的に可能となっています。
災害時の貴重品やお金の紛失に備えよう|スムーズな対応方法と保険の活用
保険証の紛失時の対応
災害で保険証を紛失した場合でも、しっかりと対応策があります。
介護保険証や負担割合証の紛失時には、氏名・住所・生年月日・負担割合の申告により、被保険者証等を提示したときと同等のサービスを受けることができます。病院を受診する際も、健康保険証がなくても個人情報や加入している医療保険者の情報により保険給付扱いで診療を受けることが可能です。
所得減少時の対応と介護保険料の減免
災害による損害や所得の減少(生計者の傷病、失職など)があった場合は、介護保険料の減免制度を活用することができます。介護保険料の負担軽減を受けることで、経済的な負担を軽くすることができます。
災害に備える際には、保険の情報の控えも大事!
経済的な困難に直面した場合は、介護保険料の減免制度を利用できることもあわせておさえましょう!
災害時の在宅医療の備え| 安心な療養を保つための準備と情報
災害が発生した場合、在宅医療の中断は生命に直結する可能性があるため、早急に対策を講じる必要があります。災害対策の重要性を心に留めて、事前の準備を行いましょう。適切な準備が生死を左右する場合もあることを忘れずに。
常用薬の準備
特にインシュリンや降圧薬など、効果が切れると健康への負担が大きくなる薬があります。
できるだけ常用薬をストックしておくよう心掛けましょう。お薬手帳や処方箋も取り出しやすい場所に保管しましょう。
災害時には医師の診察が受けられなくても処方箋の提示により薬を受け取ることができます。
医療器材・衛生材料の準備
例えば、ストーマ(人工肛門)を利用している場合には、器材のストック確保や粘着補強材(優肌絆など)の準備、長期間使用できるようにパウチの確保などを行います。
経管栄養を受けている場合には、栄養剤のストック確保や代替となる市販の栄養剤(メイバランスなど)の準備、栄養剤を手作りするための知識(チューブが詰まらない食形状)持つことが重要です。
褥瘡(床ずれ)の予防には、ワセリンなどの保護剤の準備、エアーマット・電動ベッドなどの自動体位変換機能は電気の遮断により使えなくなるため、代替として除圧器具(クッションなど)を用意しましょう。
医療機器の準備
酸素や吸引器などの医療機器も災害時には重要です。 酸素ボンベの予備を補充し、酸素業者との連絡体制を確認しましょう。
また、自家発電機の準備や酸素設備のある施設の情報収集も重要です。
酸素の消費を抑えるための過ごし方や吸引以外の排痰法(タッピング、体位)、手動吸引器についても知っておくと役立ちます。
介護者が知っておくと役立つ情報
介護者が知っておくと役立つ情報として、近隣のサービス機関や福祉避難所についても調べておきましょう。
災害時には通常利用しているサービス事業所が機能停止する場合も考えられます。先述したように、災害などでやむを得ない場合は、契約していない施設、事業所もサービスを提供できる場合があるため、事業所の情報を入手しておくことが重要です。
また、福祉避難所は特別な配慮が必要な方を受け入れている施設であり、自身や家族が利用する可能性もあるため、所在地や利用方法を確認しておきましょう。
【まとめ】災害発生時に備えること
・サービス事業者との事前打ち合わせ(避難場所、連絡手段など)
・近隣地域の施設やサービス事業所、病院、訪問医についての情報取集
・被災者が受けられる保証について知る(収入減の場合の保険料減免など)
・予備の医療器材、薬類を確保する
・必要な物(薬、保険証、処方箋など)は取り出しやすい所にまとめて保管する
災害時の在宅医療の備えは、安心な療養を保つために欠かせません。
災害発生時にスムーズに対応できるよう、今のうちからしっかりと対策しましょう!