何回分残っていますか ー この体の使用回数 ー

 

「哺乳類の一生の心拍数はあらかじめ決まっている」という説を聞いたことがあります。

疾病予防や医学の進歩、急性疾病の罹患など後天的要因もあるため、

絶対的な原則と言えるものではないですが、

様々な研究により、心拍数と寿命の相関関係は明らかです。

 

 

昨年、東京都心で雪が降った日数は6日

 

満月の周期は29.5日に1回

 

すべてのことは一定の回数しか起こらず、その回数は極めて少ない。
(ポール・ボールズ)

 

私たちに与えられた機会には、

回数制限があります。

 

私が雪を踏む音を聞けるのは、多く見積もってあと100回くらいでしょうか。

いつか私の足腰の力が低下したら、もう雪の上を歩くことはできないでしょう。

耳が聞こえなくなったら、雪を踏むサクサクという音に触れることはできません。

そう考えると、あと30回もないかもしれません。

 

明日死んだら、昨年の雪が最後だったということになります。

 

月に1、2回の満月を、また数週間後にも見られるとは限りません。

その数週間先も、数年先にも一定の間隔で見れるのが当然だと、

私たちは無自覚のうちに信じています。

 

私たちは、

日常の繰り返される出来事は、またすぐに訪れると思って疑うことを知りません。

 

子供の頃に何度も聞いた母の小言

昔飼っていた愛犬の出迎え

ばあちゃんが作るインスタントラーメン

学校で好きな人とすれ違うこと

幼なじみからの遊ぼうの誘い

全てのことには例外なく終わりがありました。

ずっと身近にあったものが、今は一つもありません。

私たちには、いくつもの回数券が与えられています。

 

母の小言 10000回

愛犬からのおかえり 3000回

ばあちゃんのラーメン 80回

回数券を使い切ったらそこで終了。

もう二度と当たり前の日常に戻ることはできません、

 

 

もしも、

回数券の残数を知っていたら、ちゃんと計画できたのに。

後悔のない時間を過ごせるよう努力したことでしょう。

 

もしも、

母の小言があと10回だと知っていたら、

ちゃんと聴いて苦労を分かち合ったでしょう。

ばあちゃんと一緒に食べるラーメンの味を、

噛みしめたでしょう。

しっぽを振って迎えてくれた愛犬と思いっきり遊んであげたでしょう。

いつもの光景を尊く思えることができたでしょう。

 

しかし、それらが続くと信じて疑わないから、

大事なものに目を向けず

溢れる情報に意識を持っていかれ、

過去の失敗やまだ起こっていない不安に心を奪われているうちに

知らぬ間に大事な回数券をすり減らしてしまいます。

あなたの残数を確かめてみてください。

 

あと何回分残っていますか?

私が田舎に帰省するのは5年に1回くらいです。

このままだと、母の顔を見れるのはあと5回もないかもしれません。

一緒に買い物に行ったり、旅行できるのはあと…

もう二度とないかもしれません。

 

私のこれまでの人生で、大事な人が助けを求めてきた回数はそう多くはありませんでした。

その時に回数券を使わず、何回列車を見送ったのでしょう。

乗るべき列車においていかれないよう、

求められていた機会に気づけるよう、

ちゃんと足を踏み出せる準備をしておけばよかったのです。

 

でも、列車がいつ訪れるのかが分かりません。

 

 

だから考えておこうと思います。

最後の回数券を使う時に、

大事な人に何を遺すことができるのか。

どんな言葉を贈るのか。

回数券が切れて後悔する前に考えておけば、

最後の切符の前に、「今しかない」って動けるかもしれません。

アンテナを張っていれば、列車に早く気付けるかもしれません。

 

 

家族との電話、友人の笑顔、読める本、

好きな喫茶店、愛犬と眠る夜

私の貴重な回数券です。

いつ、最後の切符を使うのか、

私には分かりません。

だから慎重に使いたいのです。

残数を気にしておきたいのです。

道の途中で落とさぬよう、しっかり持っていなければならないのです。

 

 


 

 

 

今、窓の外は雨です。

午前9時にして薄暗く、小雨の音を聴きながらブログを書いています。

足元には愛犬がいて、平凡な朝です。

こんな朝をあと何回迎えることができるのか、私には分かりません。

 

 

すべてのことは一定の回数しか起こらず、その回数は極めて少ない。あと何回、子供のころのあの午後を思い出せるだろうか?すっかり存在の一部になっているので、それがなければ自分の人生など考えられない、というある日の午後を。おそらく、あと四、五回だろう。そんなにないかもしれない。あと何回、満月を見られるだろうか?おそらく、あと二十回だろう。それなのに、我々は無限に見られると思っているようだ。もっと効率的に時間を管理してください。自分の時間がいかに大切かを、厳しく自覚するのです。そのもっとも貴重なものを他人に浪費させたりせずに、本当に重要な活動だけに投資してください。
(ポール・ボールズ)

 

 

ただひとつ確かなことは、

灰色の空も、雨の音も、ブログを書くことも、

愛犬と迎える朝も、

いつかは手放す時がくるということです。

 

 

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