透析患者の負担を減らす資源

透析療法を受けると、お金、時間、体力・精神力、あらゆる負担が伴います。

長期的に負担を伴う透析療法では、利用できる資源を最大限活用し負担を抑えた上で、個々の生活に合わせた療養を実現することが望まれます。

透析療法の概要

<一般的な透析>
■ 血液透析
日本では透析患者の大半(90%以上)は血液透析を受けています。
血液透析は週3~4回、1回に4時間程度の通院を必要とします。
料金は月に40万円ほど。これに通院(移動)費・食事代が加わります。病院によっては食事を無償提供しているところや、移送費を抑えられる業者もあります。

<その他の透析>
■ 腹膜透析
腹膜透析とは腹腔内にカテーテルを挿入し、そこから不要な水分や老廃物の除去を行う方法です。基本的には自宅で透析液の交換を行い、通院は月に1~2回程度。費用は月30~50万ほど。

 在宅透析
自宅で患者の生活スタイルに合わせ透析ができます。在宅透析をするための指導を受け理解が得られる人やきちんと自己管理できる人、身体状態(心臓などへの合併症の有無)など条件に適した人でないと受けることはできません。機器類は業者からリースで利用し、利用料は医療保険適応となります。(治療開始時だけ機器類の設置、調整に伴い十数万が発生)水道代や電気代により月に2万円前後かかります。

血液透析は時間的な喪失が大きく、1回4時間・週3日の通院となれば年間630時間+移動時間を費やさなければいけません。その一方で医療的管理を受けながら治療を受けられるのは大きな安心です。

腹膜透析・在宅透析では自己管理、周囲のサポートが重要です。自らの生活スタイルに合わせて実施できるのが最大のメリットですが、治療に伴う不安(透析中の体調変化やトラブル)や長期的な自己管理・サポートの必要性が生じます。透析で生じる体への負担を考えると誰でも適応するものではありません。体調や管理能力をみた上で医師の判断が前提になりますが、療養者や介護者自身も生活を顧みてきちんと管理できるのかを考え判断しなければなりません。

透析治療を支える社会保障

治療費の助成

高額医療制度(特定疾病療養受領証)
高額な医療費を長期にわたって支払わなければならない場合、「特定疾病療養受領証」の対象になり、人工透析を受ける方も含まれます。
特定疾病療養受領証を利用した場合、毎月の支払上限は1万円になります。(ただし70歳未満で標準報酬月額が53万円以上の人は上限2万円)
申請は市町村窓口(後期高齢者医療制度、国民健康保険に加入の場合)または加入している保険団体(共済組合、協会けんぽなど)のHPから申請書の発行ができます。

身体障害者手帳
取得することで以下①②の保証、その他自治体によるさまざまな助成を受けることができます。腎機能障害の障害者区分は腎機能検査や生活活動能力といった項目を指標に判断されます。透析を受ける場合はおおむね障害者1級にあたると考えてよいでしょう。

①自立支援医療
助成を受けるには身体障害者手帳の交付をうけ、治療を受ける医療機関が「自立支援医療機関」の指定を受けていることが必要です。
医療保険適応の治療であればどれを受けても負担割合は原則1割(一定所得以上の人は除く)となります。しかし障害や治療の程度によってはその1割さえも大きな負担になることがあります。このため「原則1割かつ所得に応じた上限を設ける」ことで、以下の金額以上はかかりません。

(上限金額)
中間所得者:医療保険の高額療養費の金額(1万円/月)
低所得者2:5000円
低所得者1:2500円
生活保護:0円

補足:低所得者…市民税を非課税であり、年間所得80万≧低所得者1、80万≦低所得者2
   中間所得者…市民税課税であり、所得税30万以下または所得に応じて該当

② 重度心身障害者医療制度
高額医療制度や自立支援医療での自己負担分からさらに減額できる制度です。助成の対象や内容は自治体により異なります。

透析の通院・移送にどう対応する

■ 身体障害者手帳を持っている方
公共交通機関の割引
1~4級を有している方はバス、電車、タクシーなどの公共交通機関を無料または割引額で利用できます。
重度訪問介護
重度の知的・精神障害または肢体不自由者、移動・歩行・排泄において「支援が不要」に該当しない人など対象範囲が限られています。
移送中に受ける介護に保険適応されます。(運賃は別途発生)

■ 介護保険の移送
指定許可を受けている事業所に限りサービスを提供できます。
介護保険サービスはあらかじめ設定されている限度額内でないと保険適応とならず利用が制限されます。限度額いっぱいに別の介護サービスを利用している場合は移送介護を組み込むことが難しく、必要に応じて別のサービスを減らして調整しなければ利用はできません。

※介護タクシーの利用・移送時の介護も含め一般的に「介護」といわれるサービスは、身体障害者手帳より介護保険がの方が優先されます。
介護保険で移送介助を使いたいけど限度額がいっぱいで難しいという場合に、身体障害者手帳の保証を併用できるかは各自治体により異なります。

通院介助ボラティア
民間業者やNPO法人などの有償ボランティアになりますが、通常よりも安い料金で利用できるものがあります。

送迎付きの透析病院
中には送迎サービスを提供している病院もあります。

透析病院が少ない地方部はどう対応すればいいのか

近くに透析病院がある場合はまだ助かりますが、地方部に行くと片道1時間ほどをかけて通院している人もいます。介護度が高い人や体調に問題がある人にとっては大変な負担です。透析患者は年々増加しており病床不足が問題視されていますが、今後ますます透析患者の負担が大きくなると予測されます。

透析を受ける場所が身近になければ、住み慣れた土地を離れたり、治療を断念しなければならないのでしょうか。透析治療には医療費保障がありますが、治療以外にかかる負担をどう解消するかは課題だと思います。

先に述べた在宅透析・腹膜透析も選択肢のひとつだと思います。しかしこれらはあまり知られておらず選択肢であるという概念もない人がいるかもしれません。在宅透析や腹膜透析を受けるには周囲のサポートも必要ですが、条件がそろえば訪問看護を利用してサポートを補うことも可能です。いろんあ資源があることを知るだけで、求める療養生活を実現する手掛かりが見つかるはずです。

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