偽りの親切心?メサイア・コンプレックスに立ち向かう勇気

 

自己犠牲で頑張りすぎるあなたへ。

その頑張りは本当に人の役に立っていますか?

 

メサイア・コンプレックスの罠:仕事の重圧に潰れていく中で見えた自己認識の歪み

 

「もう限界」

「こんなに頑張っているのに、なぜ誰も分かってくれないの」

休日も返上して仕事をしているあなた。とっくに超えているキャパシティとプレッシャーの中で何を感じていますか。なぜそれほど頑張っているのですか?

 

 

中間管理職Aさんの事例

日々の現場業務に加え、管理職としての業務も担うAさん。

同僚たちが帰った後、彼女は一人デスクに向かい、ようやく事務仕事を始めます。退勤は早くても深夜、時には仕事を持ち帰り徹夜したり、休日返上で働くこともありました。

 

なぜ、自分ばかり…。

こんなに頑張っているのに、なぜみんな分かってくれないんだろう。

みんな身勝手だ、ひどい。

ここまでやっているのだから、もっと評価してほしい。

感謝してほしい。

 

でも同僚からの感謝の言葉は愚か、理解も協力も得られません。

当然です。周囲の同僚も、仕事を振らないAさんにイライラが募っていたのですから。

 

みんなとの距離が広がり孤独感に苛まれるAさん。

一生懸命やったのに、何故こうなってしまったのでしょうか。

 


Aさんは、なんとなく自分で分かっていました。

この職場だから、管理職だからこんな状況に追い込まれているのではないと。いつも自分で仕事を抱え込み、周囲から孤立してしまう。いつも、どの職場でも最後は孤独に陥る。

そして精神的に限界になり、職場にも居づらくなって退職に追い込まれてしまうんだ。

この状況を作ってしまう原因は自分にある。

でも何がいけないのか全く分からない…

 

メサイア・コンプレックスの心理解 : 自己満足か、真の奉仕か?

さて、あなたはメサイア・コンプレックスという言葉を聞いたことがありますか?

メサイア・コンプレックスは別名「救世主願望」と呼ばれます。

つまり、助けてあげたい願望です。

助けてあげたいなんて、一見素晴らしく感じられますよね。

でも本当にそうでしょうか。相手の気持ちを無視した一方的な行為ならばありがた迷惑です。

 

メサイア・コンプレックスを持つ人の手助けは純粋な優しさからではなく、その動機は「自分を満たすため」

自分に自信がないからこそ、他人を救うことで自分の存在意義を確かめようとします。

無償の貢献心ではなく、「認められたい」「感謝されたい」「自信をつけたい」といった見返りを期待するからこそ、他者に手を差し出すのです。

 

でもこういった、感謝されたい、認められたいという感情は、誰しもが持つ感情です。

承認欲求は人間が持つ基本的な欲求です。

人のために行動しようとするとき、自分にもメリットがあるから労力を費やせるというのは普通のことです。

では、メサイア・コンプレックスと一般的な承認欲求をどう見分けたらいいのでしょう。

メサイア・コンプレックスの場合は、強い劣等感や不満が背景にあり、その反動で誰かに感謝されるようなことをして自我を保とうとします。

しかし、行動の背景を他者が知ろうとするのは難しいですし、メサイア・コンプレックスの当人すらも自身の行動背景に気づくのが困難なケースも多いです。だからこそ、事例のAさんのようにどこに行っても疲弊しては孤立するというパターンにハマってしまうのです。

 

 

自分を犠牲にしてあなたに尽くそうとする人がいたら、あなたはどう感じますか?

その気持ちはありがたいですが、ちょっと重たく感じませんか。

頼んでないよって、ありがた迷惑に感じませんか?

 

いくら相手のためとはいえ、相手の気持ちを蔑ろにしていれば、相手から思ったような反応が返って来なくても当然です。

 

頑張っても身を結ばず、ただ心身を消耗し、やがて限界を迎え、仕事の放棄や他者攻撃などといった悪循環を招きます。

 

そう、Aさんの事例と同じように

仕事を抱えすぎる→キャパオーバー→過労→精神消耗→被害意識

こんな悪循環を繰り返してしまうのです。

行動の動機が自分ではなく他者に依存していると、

モチベーションも感情も周りの反応に左右されやすくなります。

 

自分の感情は他者次第で不安定に動揺するのです。

 

どんなにキャパオーバーでも、仕事を頼まれると引き受けてしまう。

自分がこの業務を行うことで、みんなの役に立てると心から思っているから。

会社のためだから、私がやった方がうまくいくから。

でもそれは、「認められたい」という自己を正当化するための思い込みかもしれません。

 

本当は自信がなくて弱さを晒せない自分自身に、

「相手のためなんだ」と思い込ませているに過ぎないのかもしれません。

 

メサイア・コンプレックスの危険性:知らぬ間に陥る支配的なやさしさ

では、「相手のため」という思い込みの裏にどんな心理が隠れているのか。

・特別な仕事をしているという印象を周囲に与えたい

・人一倍努力しているように思われたい

それは、私はこんなに優秀です、特別ですというアピールです。

自分の評価を上げるために勝手に仕事をこなしているのは、直接的に他者の迷惑にはなりません。

しかし、

・他者の経験の機会を奪ってしまう

・「自分ばかり」という被害意識が、「あの人はできない」と他者に低評を下し、思い込みによる他者像を形成してしまう

このような蓄積が職場のモチベーション低下や成長の停滞につながるでしょう。

当の本人も他者を尊敬できず、仕事を任せることができす、孤立や心身の限界に至ると、仕事を手放すことになるのは時間の問題です。結果、職場に迷惑をかけて退職に追い込まれるのだとしたら、“一人よがりの貢献“は誰のためになったのでしょうか。

 

またメサイア・コンプレックスの厄介名ところは、

表面的には献身的に尽くそうと言う姿勢のため、支配やマウントという裏の心理に周囲も気づきにくく、本人すらも自覚がないことです。「相手のため」という名目で自分のやさしやを押し付ける精神攻撃は、攻撃を受けた方または指摘をした方が「恩を仇で返す」悪者に映ってしまうこともあります。

 

無意識の自己犠牲から抜け出すヒント

メサイア・コンプレックスを改善すること、他者が対処することは簡単ではありません。なぜなら、承認欲求は誰もが持つ心理であり、生きる上で不可欠なものだからです。世界は満たされない欲求で溢れています。幼い頃に受けたトラウマや劣等感も自己価値に影響を与え、メサイア・コンプレックスを引き起こす一因になりますが、容易に癒せるものではありません。

だから、メサイア・コンプレックスと上手に付き合う方法を考えた方が現実的です。

 

コンプレックスは誰もが抱えているものです。

しかし、マイナスなことばかりではありません。

太りやすい体質がコンプレックスの人も、ダイエットしてメイクを研究して魅力的になれたり、コンプレックスを自覚し克服することで長所に変えることができます。

 

コンプレックスをプラスに変える鍵

それは、自分の行動の動機を自覚すること

 

行動の動機を知ることってすごく大事です。

メサイア・コンプレックスにとっても大きなメリットがあります。

「なぜ自分はこんなに頑張っているの?」と少し立ち止まって考えてみてください。無意識の自己犠牲から抜け出し、自分の限界や相手の本当のニーズを意識する冷静さを取り戻すことができるようになるかもしれません。

相手の気持ちはわからないけど、自分のエゴで行った行動なのかはきっと自分で分かるはずです。そうやって『本当の意味で相手のことを考えた行動』をとれたとき、結果として失敗してしまってもきちんと自分を尊重できると思います。

 

補足:周囲のありがた迷惑に疲れたあなたへ

また、メサイア・コンプレックスが周囲にいる場合は、

「境界線を示す」

ことが私は大事だと思います。相手がありがた迷惑な行為をしてきた場合、建前で感謝を伝えたり、相手のペースに流されるのが大人の対応と考える人もいると思います。しかし、それでは相手の助けたい願望を強めてしまう可能性があるし、相手の「助けたい願望」を叶えてあげ続けるのは心が疲弊していきます。

「ありがたいけど、私はこうしたい」

と自分の意思を伝えていくことで、境界線を濃くし健全な心理的距離を保つことができるでしょう。

 

 

がんばるメサイア・コンプレックスのあなたへ

メサイア・コンプレックスは、人の気持ちを蔑ろにして利欲心から親切を押し売ることがある。

改善していくには、「手を出さない勇気」を持つこと。

手を出したい理由をちょっと立ち止まって考えてみましょう。

自己犠牲的に自分を消耗するのをやめ、何に自分の時間を費やすのか選択できるようになれたら、きっと自分で自分のことを認められるようになります。

誰かに認められなくていい。

そのままでいい、誰かの役に立たなくてもそこにいるだけでいいんです。

 

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